2007年金融プログラム 中国研修を振り返って

 今回の中国研修は、今年からMBAコースに取り入れられた金融プログラムの一環として実施されたものであり、全体のスケジュールとしては清華大学(中国において文系・理系ともにトップレベルの大学)での講義、「中日産業経済国際フォーラム」への参加、数社への企業訪問など10日間の日程で行われました(参加人数は15名)。いずれの内容も中国の政治・経済・社会などの歴史や現況を知るうえで大変実のあるものであり、基礎的な知識から日頃メディアなどを通じての情報では得られないこみ入った問題まで様々な知識や情報及び気づきを得ることができた研修であったと思います。

 私が研修全体を通してとりわけ印象に残ったことは次の3点です。
まず1点目は環境及び省エネ問題です。近年目覚ましい経済成長を遂げている中国において、環境及び省エネ問題の克服は中国経済の持続的成長には欠かせない最重要課題であり、日本でも大きく取り上げられている大気・水質汚染に加え水資源の枯渇と砂漠化の進行など、速やかに対処していかなければならない問題が山積みとなっています。「中日産業経済国際フォーラム」においてこの課題が様々な角度から議論され、中国政府の政策立案者がこの問題を国家政策の重要課題の1つとしてはっきりと認識し、それに対する対応策を真摯に発言していることに私は新鮮な驚きと一種の喜びを感じました。隣国である中国は日本と地理的に近いばかりでなく、経済的な関係も米国と並んで非常に強いものとなっていますし、また国土も人口も桁はずれの大きさを誇る中国の環境及び省エネへの対応は日本だけでなく世界的にも大きな影響を与える問題といえます。中国に生産拠点を多く構える日本にとって、この問題は他人事ではなく自ら積極的に関与すべき課題であり、今後技術支援をはじめとして双方が積極的に協力しながら対応することが両国の持続的な発展にとって不可欠であると痛感させられる機会でありました。
 2点目は地域間格差是正の問題です。中国経済の発展は沿岸地域の大都市によって牽引されてきたものであり、その結果人口や所得(生活水準)などの面で都市部と農村部の間には非常に大きな地域間格差が生じています。世界の製造業の加工基地である中国はその経済発展を主に外需に依存している状態であり、今後人民元の切り上げや給与水準の上昇などに伴って中国のコスト優位性が低下していく中で、農村地域の発展による安定した内需の醸成が中国の持続的成長には不可欠であります。中国政府も環境問題とリンクさせながら農村地域の発展のための政策に着手しているものの、電気・ガス・水道・交通などのインフラや社会保障、教育環境の整備はまだまだこれからといった感じであり、地域間格差の是正は非常に険しい道のりであると感じました。中国経済の崩壊は中国進出を果たしている日本企業にとって深刻な痛手となることは間違いなく、そうした事態を回避するためにも今後の中国政府の地域間格差解消に対する施策と進捗状況を注視していきたいと考えております。
 3点目は増加する優秀な人的資源についてであります。上記の2点は中国が抱える負の代表的な課題ですが、優秀な人材の増加は中国経済にとって明るい希望となっています。中国では沿岸部を中心に基礎教育の基盤が整備され、また強固な産学連携のもとに大学(特に理系)においても高度な教育が行われるようになっており、その結果高い水準の教育を受けた優秀な人材が年々増加しています。こうした状況のもとで、今後中国の技術力向上および価格面以外の競争力確立が期待されており、それに対して日本企業は力をつけてくる中国企業に対抗すべく人材の育成・強化に努める必要があるとともに、中国でのビジネス展開において優秀な現地人材の獲得および流出回避に向けた制度構築と運営が今後より一層重要になってくると感じました。

 最後に、私がこの研修を通じて改めて感じたことは「現地現物」の重要性です。今回の研修によって初めて中国を訪れたわけですが、日本での中国に関する報道や文献調査によって研修以前に自分や抱いていた中国に対するイメージと異なる感覚を覚える場面が数多くありました。非常に基本的なことではありますが、その地域の政治・経済・社会・文化を正しく理解するためには「現地現物」にて身を持ってその地域に触れることが極めて重要であり、ビジネスにおいてもその姿勢を徹底することが的確な戦略構築と地域への順応性向上に繋がると感じた次第です。
 今回の研修は中国を知るためのスタートにすぎませんが、この研修で学び感じたことを今後の調査・研究につなげ将来のビジネスに役立てていきたいと思いますし、このような研修機会が他にも企画されるようであれば是非参加したいと思います。
 最後に、今回の有意義な研修を企画・準備・運営いただいたみずほ証券・清華大学・一橋大学の皆様方に改めて厚く御礼申し上げます。(8期 兒玉)

清華大学を訪問
日系企業を訪問
記念撮影
閉幕式の様子